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今年、観光庁はゴールデンルート(東京・名古屋・京都・大阪)に集中する観光客の分散化と、地方創生につなげるため、複数の都道府県を跨ぐ新たな観光ルートの形成を促進する「広域観光周遊ルート形成促進事業」を開始した。そのお手本となった中部・北陸地域の「昇龍道プロジェクト」の立ち上げから、マーケティング、プロモーション戦略に携わっておられる田中三文氏をお招きし、インバウンド観光を推進する組織体制のあり方についてご講演いただいた。
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| ●はじめに |
今年の訪日外客数は、国が目標としてきた2000万人に達する勢いがある。10年前、観光貿易赤字をいかに解消するかということで、当時の小泉首相が観光立国宣言を行って以来、日本人が海外に行く出国日本人数と訪日外客数が初めて逆転した。円安傾向も大きな要因だが、これが円高基調に変わってきたときに、突然、訪日外客数増加が冷めていく可能性はあり、今年が最高値になってしまうかもしれないという恐れはある。ただ、日本中でインバウンド観光のプロモーションに対して積極的に動いているし、受け入れ環境もどんどん進んでいるのが現状である。
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| ●いま何が起こっているのか |
1番目は宿泊施設の不足。全国の大都市部では、外国人が想定以上に来日し、宿泊施設が不足している。空きマンションや空き店舗、空きビルを再活用してゲストハウスに作り直しているという動きもある。大阪では宿泊に関する条例を作って、そのような施設の許可を始めると聞いているが、全国でもそのような動きが出始めるだろう。
2番目はバスの不足。特に団体ツアーのバスが確保できない。バスの運行の規定が変わり、今まで以上に移動距離が短くなっている。バス業者に聞くと、バス不足というよりも運転手不足が起きている。団体ツアーはバスも宿も取れないため、海外の旅行会社は商品が組めず、外国人もどんどんFIT(個人旅行)化へ進んでいる。ここ2、3年でFIT化は進んでいたが、特に台湾、香港は完全にFITで旅行する人たちが増えている。中国も、2、3年前までは団体旅行しか許可されていなかったが、今は個人でも旅行できるように緩和され、中国の方もFITが増えている。FIT化が進むと、団体バスではない交通機関が必要になり、交通フリーパスがある地域の人気が高まっている。基本的にはジャパンレールパス(日本全国のJRのうち、のぞみ以外の新幹線と特急電車に乗れる)を使う人が多く、それ以外でも、関西では、スルッとKANSAI、阪急ツーリストパス、南海パスなどを使う人が増えている。
3番目は消費の拡大。爆買いといわれる地域経済効果が生まれている。自分のためだけではなく、人から頼まれて買って帰る。爆買いに積極的に関わっている商業施設かそうでないかで、差も出てきている。
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| ●国籍で宿泊地に違いがある |
国籍別の宿泊場所のデータを見ると、圧倒的に東京都が多い。次に大阪府が半分、さらにその半分ぐらいで京都府、北海道と続く。このデータは5月だけだが、1年通してもほぼ同じだろう。
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これを国別に見ると、韓国、中国、香港あたりは、大阪府が東京都に迫っている。関西で見ると、ベトナム、マレーシア、フィリピンなど東南アジア系と東アジア系が多い。
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| ●広域観光ルート形成は、計画ではなく、実のあるものへ |
今年度、国の施策として広域計画ルートが全国で7ヵ所選定された。これは地方への拡散の期待とそれによって需要を拡大することを目的としているが、同時に各地方の連携組織が一体となって新しいルートを作り、そこに外国人を呼び込むような施策を展開することが望まれている。10年ぐらい前にも、広域で連携して、国際観光圏を各地で策定する事業があった。そのときはもう少し狭い圏域、たとえば、中部地方なら東海4県の連携、あるいは静岡と箱根と山梨で連携するなど、特定のエリア連携だった。しかし、それが本当に商品化されたかというと、実はあまりなかった。ただし各地における連携組織が実際に動いたことは確かである。今回の広域ルート形成も、ただ計画を作るだけでは意味がなく、そのルートを海外の旅行会社、あるいは海外の個人の旅行者の人たちが実際に回って楽しんでもらえるようにならなければ意味がない。具体的に計画を進めていく段階で、プロモーションと受け入れを図っていかないと実のあるものにならないと感じている。
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