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講演日時:2015年5月19日13:30~15:00
場所:大阪中之島ビルB1
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●はじめに |
本日のテーマは、九州のインバウンド観光への取り組みと、なぜ九州は1つになれたのか、ということだが、本当に九州が1つになれたのかは、まだよくわからない。九州は1つ1つと揶揄され、それを何とか1つにしたいと、ここまでやってきたが「1つ1つが九州」でもいいのかもしれない。その先にまた、「九州は1つ」というのがある 今年の2月5日、長崎県が北京で観光展を開催したという記事が西日本新聞に掲載された。その記事の見出しには「九州の味、観光、売り込め」と書かれている。長崎県単独の予算のイベントだが、長崎を中心とした九州の観光を売り込みたいという、現地の旅行会社のコメントが出ている。このように、「九州の長崎」というプロモーションを、各県が意識的に実施する段階になってきた。
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この地図は大分県の地図であるが、昔の大分県の地図は、大分県の部分だけが切り取られていた。今は、九州の地図の中に大分県が描かれていて、隣県にある阿蘇なども意外と近いことが見える。また、宮崎県の高千穂はメジャーな観光地であるが、これまでは、宮崎県の観光課がポスターやチラシ作るとき、宮崎空港から4時間と記載していた。お客さまのほとんどは、熊本空港から1時間半と認識しており、現実に、高千穂で走っているレンタカーはほとんどが熊本ナンバーである。宮崎県の観光課がつくるパンフレットで、熊本空港から1時間半、ようこそ高千穂へ、というパンフレットをつくろうとすると、なぜわが県の予算を使って熊本県のPRをするのか、という話になる。実際に宮崎県でそういう話があったわけではないが、こういう話をすると、県や市の方なら、想像できるのではないだろうか。
他にも、九州には天草と雲仙という観光地があるが、天草は有明海に浮かぶ熊本県の非常に美しい島で、その対岸の長崎県の雲仙には仁田峠という非常に素晴らしい風光明媚なところがある。実は、雲仙の仁田峠から見る天草の景色が一番美しい。しかし、天草の人も、熊本県の人も、雲仙の人も、長崎県の人も、「わが仁田峠にいらっしゃい、天草がとってもきれいに見えます」ということをなかなか言わない。本当にお客さまに知っていただきたいことは、なかなか情報発信できないのが現状である。この九州観光推進機構(以下、機構)は、そういったことをクリアしていきましょう、ということで始まっている。
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●九州観光推進機構とは |
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九州は1つという理念の基に、2003年に九州地域戦略会議ができた。この九州地域戦略会議は、九州の7つの県の県知事と、九州経済連合会、九州経済同友会、九州商工会議所連合会、九州経営者協会という4つの経済団体のトップで構成されている。ここで、九州が1つになってできることとして選ばれたテーマが観光だった。この戦略会議のなかに九州観光戦略委員会ができ、九州観光戦略をつくった。その九州観光戦略の戦略1には「九州の観光を磨く」とある。このとき既に免税店の拡大などが提案されていて、相当先見の明があった。戦略2と3は、国内の大都市圏、あるいは海外から誘客するということで、ターゲットは東アジアであった。この観光戦略の一番優れていたところは、戦略4にある「この観光戦略を実施する組織をつくる」ことを謳ったことにある。つまり、この戦略が絵に描いた餅に終わらなかった理由は、この戦略を実行する部隊をつくる、ということをはっきり明記した点である。各県の知事の承認を得ていたので、その後、組織をつくるところから、非常にやりやすかった。
いま職員は31名。九州7県から1人ずつ出向職員がおり、民間からは、JTB、日本旅行、近畿日本ツーリスト、日本航空、全日空、JR九州、西鉄、九州電力、NTTドコモ、リクルート(順不同)などから出向してもらっている。わが県、わが社のために頑張るということではなく、九州のためにわが県、わが社は何ができるのかを考えてほしいと話している。行政はだいたい2年か3年ずつで交代する。海外誘致部と企画部の部長は行政の方が、国内誘致部は旅行会社の支店長経験者が担当している。海外誘致部での経験は、海外に人脈ができるので、その経験を県に持って帰れば県にとってもメリットは高い。各県にいずれか順番が回ってくるので、そのときにいかにいい人材を派遣できるかがポイントである。ほとんどのケースで、この機構から県に戻ったら観光課などに配属され、いずれ部長や局長になると機構の理事になる。または、観光連盟の専務理事や事務局長になると、機構の運営協議会の委員になるなど、機構は潤滑油のように機能している。
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