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[日時] 2014年5月29日(火)14:00~15:30
[場所] 大阪中之島ビルB1階
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講師
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
政策研究事業本部 経済・社会政策部 主任研究員
一般社団法人日本医工ものづくりコモンズ 理事 柏野 聡彦 氏
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●医療機器産業を巡る動向 |
医療機器産業の魅力は、世界市場が約20兆円あり、今後も拡大が見込まれているということである。国家戦略に位置づけられ、国家的にも地域的にも、個別企業的にも取り組みが活性化している。そのような大きな潮流の中で、医療機器開発をサポートする事業の代表例は、経済産業省の「医工連携事業化推進事業」になるだろう。この事業は、平成22年度補正の30億円、36事業というところから始まる。この事業のスタートアップ、枠組みづくりに私自身が関わっていたが、36も事業があると、事業化が円滑に進んだもの、逆に事業化が難渋しているものがあり、それぞれに特徴がある。事業化が円滑に進んだ事例の特徴は、コンソーシアムの中に製販企業が入っていて、かつ事業化のイニシアチブをとっているような事例である。さらに、そのテーマは、新規の医療機器ではなく、後発改良の医療機器に収まっており、基礎研究段階の要素技術が含まれていないものという特徴がある。
様々な医工連携を見て分かってきたのは、新規参入しようとするものづくり企業が、単独で医療機器の製造販売を実現することは、非現実的ともいえるほど高いハードルを越えていこうとすることではないか、ということである。しかし、これらのハードルは、既存の製販企業の持つノウハウにより、比較的効率的に越えていける。今後の医工連携の方向性は、製販企業がイニシアチブをとって事業化を強力に推進し、そこにものづくり企業や大学が参画していくという形であり、このようなモデルを、製販企業ドリブン型の医工連携モデル、すなわち「製販ドリブンモデル」と呼んでいる。
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●製販企業ドリブン型・医工連携モデル |
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製販ドリブンモデルは、まず臨床現場から臨床ニーズが提供されて医工連携の起点になり、製販企業が臨床ニーズを受け取って研究開発・事業化の核になりながら、薬事を通して事業化をしていくという流れがメインストリームである。そこにものづくり企業が関わっていくことになる。
従来の医工連携の多くは、臨床現場とものづくり企業を直接繋ぐことが少なくなかった。その場合、臨床に関しても医療機器に関しても、圧倒的に医師の知識量が多く、ものづくり企業は医師の言うとおりに開発を進め、試作ができた頃に製販企業に持ち込む。この時になって、薬事や機能・構造・コストの問題があることがわかり、難航する。
製販ドリブン型の場合は、製販企業が、医療機器の市場と薬事に関して、かなり実践的な知識を持っている主体であるため、医師と製販企業との間では極めて具体的なディスカッションが成立し、その先に初めて、「製品デザイン」が出てくる。製品デザインが決まると、そこにものづくり企業が関わっていくことになる。
これまでの医工連携は、地域産業振興政策の枠組みの中で検討されることが多く、製販企業があまりない地域がほとんどであったため、製販ドリブン型のモデルがなかなかできなかった。最近は、臨床現場とものづくり企業は確実に地域内にほしいが、製販企業は全国でもいい、あるいは外資に参入してもらえれば、その瞬間に世界市場が視野に入るじゃないかという、新しい発想の動きが出始めている。
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