野田:大阪湾ベイエリアといいますが、神戸の方々は、前にある海を瀬戸内海と認識していることが多いのではないでしょうか。
山中:確かにそうですね。
野田:ところが実は大阪湾なのですね。今それをリゾート化しようとしていますが、以前は工業化が盛んで、人の寄りつけない場所になっていました。
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山中:そのイメージが、私には強いですね。七色の煙たなびくが売り文句でしたから、きれいなイメージはありません。
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野田:私にしたところで、最初は本で得た知識だけでした。四天王寺のすぐ下まで海が迫っていて、鳥居の真ん中に夕日があたるという、実にきれいな風景でしたが、これは平安時代のことです(笑)。しかしそのころから、大阪の人たちが海と親しんでいたことが分かりますね。江戸期になると、大阪は農業の商都になって、縦横に運河が走る町になりましたが、今はそれもなくなりました。
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山中:とにかく埋め立てましたものね。それでせっかくの川が海と切り離されてしまいました。
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野田:そこが問題なのです。都市における水辺として、もっとも重要なのが、その川と海の接点の部分なのです。ビーチではないと、私は考えています。塩水と淡水が混ざり合う、いわゆる汽水域には、たくさんの生き物が集まりますから、実に生き生きとした場所になるし、特に大阪湾を見たとき、汽水域は都市部に距離的に近いですからね。
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山中:海遊館も安治川の河口ですね。
野田:成功した1つでしょう、海遊館は。ただ面白いことに、人は年をとると、海よりも山に興味を抱くようです。ですから、どうしても海辺は若者向けの施設が多くなるでしょう。
山中:そういった施設も、なぜか直接海に触れることのできないものが多いように思います。今の若者は海のロマンチックなイメージが好きなので、汚れたり、痛い目にあったり、潮水でべたついたりするのは嫌がりますね。そのせいでしょうか。
野田:アクリルガラス越しの海が好き、ということになりますか。 |
山中:海の見えるプールとか(笑)。これでは本当に海と親しんでいるとは言えません。体験がなさ過ぎるのでしょうね、海と接するという。
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野田: 海は決して100パーセント安全なものではありません。私の経験でも、桂浜の大波はとても怖いものでした。しかし、自然の危険性は、過大に考えられる傾向があります。
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山中:それは自然の持つ、思いもよらない危険性への怖さではないでしょうか。
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野田:でも交通事故の方がよほど怖いですよ(笑)。実際に事故に遭う確率は桁違いでしょう。
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山中:それはそうですが、怖さの種類が違うと感じます。人間の管理下にないものへの、予測できない怖さが自然にはありますよ。その象徴的なものが水辺の怖さだと思います。私も子どもを連れて川に遊びに行った時、子どもから目を離せなかったですよ。
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野田:私が荒海で育ったせいもあるのでしょうか。どうも、水辺が本当に危険なものだという認識は持てませんね。ですから大阪の川辺にやたらに設けてある柵には反感を覚えます。京都は鴨川縁をきちんと整備して、いい場所を作っていますでしょう。
山中:柵を設けるという、危険性を排除 する方策を採ったと主張することによって、事故が起きた時の責任から逃れようという意図はあると思います。しかしその結果が、水辺を体験したことのない子どもたちを生み出したわけですから、ちょっと問題かも知れません。アクリルガラス越しの海だけでは、本当の水辺を知ることはできないですからね。
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