一般財団法人大阪湾ベイエリア開発推進機構
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広報誌『O-BAY』
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東日本大震災で考えるこれからの地域経済システムのあり方~関西・大阪湾ベイエリアはリスクにどう向かい合うのか~
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岡山大学大学院社会文化科学研究科教授/経済学部副学部長 中村良平氏
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講演の様子
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1.関西・大阪湾ベイエリアの姿
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 1987年(昭和62年)、日本の21世紀の国土構造のあり方を展望する「四全総(第四次全国総合開発計画)」が策定された。これは、多極分散型国土の形成を推し進めようというものであり、同年に近畿では「新しい近畿の創生計画(すばるプラン)」が提案された。この「すばるプラン」は、“双眼型国土構造の確立に向けて”という副題がつけられ、関西が経済・学術・文化の一大集積地としての関西国際文化圏を形成することによって、国土の双眼構造の一翼を担うことを目指していた。今でもそのマインドは引き継がれているが、その当時の計画が実現したとは思えず、むしろ逆の方向に進んでいるように感じる。
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『人口シェアの比較:首都圏と近畿圏』のグラフ
【図1 人口シェアの比較:首都圏と近畿圏】
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 図1の首都圏(埼玉、千葉、東京、神奈川)と近畿圏(滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良)の人口シェアの散布図(1920~2010年)を見ると、第二次世界大戦前までは両都市間とも同様に増加していた。戦後、近畿圏のシェアの伸び率(12.5%→16.0%)は、首都圏(14.5%→24%)と比較すると鈍化し、1975年(昭和50年)を境に低下している。
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『所得格差と人口移動:首都圏』のグラフ
【図2 所得格差と人口移動:首都圏】
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『所得格差と人口移動:大阪府』のグラフ
【図3 所得格差と人口移動:大阪府】
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 地域間の格差は、暮らしやすさ、経済的格差、インフラなど様々な指標で表現されるが、人々の満足度の8割は所得で占められているため、所得格差で地域格差を見ることができる。図2と3を見ると、所得格差と人口移動の間には一定の相関関係があることがわかる。所得の上昇は、地域住民の満足度が上がることから、人口流出の抑制に効果をもたらすとも考えられている。
 1973年のオイルショック以降、大阪の所得格差率は悪化し、転入超過数もマイナスが続き、ここでも大阪の地盤沈下が見てとれる。一方、首都圏はオイルショック以降も所得格差率は安定し、転入超過の状態が続いており、人口の東京一極集中はますます進んでいる。
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2. 東日本大震災で浮き彫りになったリスク
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 東日本大震災を機に、首都中枢機能の東京一極集中の脆弱性があらためて認識され、国土交通省や内閣府では行政中枢機能を中心としたバックアップ体制が検討されている。
 地域経済に焦点を絞って言うと、東日本大震災で浮き彫りになったリスクは2つほど挙げられるのではないか。
 1つ目は、東京一極集中のリスクである。東京一極集中は、大きな集積の経済効果をもたらし、国全体の競争力を高めることにつながるとされていたが、東日本大震災により、首都圏の経済活動の源である電力需要は福島や新潟などの縁辺部からの供給に依存していることが改めて認識され、電力を自給できないほどに需要が巨大化した地域のリスクは日々の経済活動を不安定にし、地域社会の生活における安全・安心性を低下させた。
 2つ目は、効率性による地域間役割分担のリスクである。大震災は地域間ネットワークの外部不経済の存在を明らかにした。技術革新によって交通費が削減され、人件費が増加する状況化においては、より上流部の産業は土地・人件費の低いところに立地する。つまり、縁辺部は土地を使う、あるいは輸送費を含めてもコストを賄えるような事業所・企業が立地するようになるということである。被災した東北地方の工場が生産する部品等の供給が停止し、域外の事業所が生産休止に追い込まれたことから見ても、特に宮城や岩手の各地域は、首都圏とのアクセスの良さなどから部品工場の立地で地域経済の基盤が形成されていたことがわかる。
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3. リスクに強い持続可能な地域経済システム
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 地域の持続可能性とは、リスクに耐える地域経済システムを強化することである。地域が小さくなると自立度は低くなるため、市町村を就業圏域等で圏域を広げ、何が自給できて何が足りないのか、足りないものは広域圏で補足し、それでも足りない場合はもっと広い地域で補足し、国内で足りない場合は輸入する、というシステムを考えなければならない。これが実現できれば、地域で無駄なものを購入する必要がなくなる。いろいろな地域が自給自足を目指すと、競争が伴う。競争は技術進歩を促し、より良いものがより安価で提供される可能性が高まり、良い人材、企業を地域に呼び込むことにつながる。
 また、持続可能な地域経済システムの構築とは、地域にとって比較優位な産業活動に取り組むということでもある。どの地域でも比較優位な産業は必ずある。たとえば、地方において環境は大事な資源であり、資金を呼び込むことができる。例えば、化石燃料に替わる代替エネルギーとして注目を集めている木質ペレットのように、自地域で再生可能エネルギーを生産することで、輸入している石油を減らし、外国に出ていくお金も減らすことができる。こうすると、石油の代替が起きてお金の循環が生まれ、所得格差の解消につながる。ただし、これは一定の経済規模がないとできない。経済規模が小さいと移出財の生産にはより多くの中間投入を域外から購入することになり、収支がマイナスになる。それらを解消するためにも広域的な連携を組んでいくシステムがマネーの流出を防ぐと考える。

 これは、今後の日本における地域間経済システムを考えるうえで非常に重要なことを示唆しており、東北、中国、九州といったブロック経済圏域内で地域資源を活かした可能な限りの経済循環構造を保ちつつ、圏域間である程度の機能を代替できる相互代替システムこそが、リスクに対応できる地域経済であると考えられる。

 自立度や循環度を高めることを考えたとき、広域市町村圏域という考え方が該当し、関西広域連合や道州制の考え方に近いとも言える。今の47都道府県の境界を変えずにブロックをつくるのではなく、たとえば、岡山であれば、東は播但・西播但地域、西は美作、備前、備中までを含めるなど、経済の循環する範囲で地域区分を決めることが理想的だと考える。
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4. 地域経済循環を考える
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 地域経済循環を分析する視点として、3つのポイントがある。
 1つ目は、各地域が何でお金を稼いでいるか、どの産業が雇用を吸収しているかである。例えば、林業や農業水産業の都市を見ると、雇用を吸収している産業とお金を稼いでいる産業は異なることがわかる。つまり、地域の付加価値を生み出しているのは何かを見極めることである。
 2つ目は、各地域で地域の経済力の基盤としてどのような産業が成長してきたのか、今後成長するのかを見極めることである。これまでの基盤産業が今後成長するかどうかの見極めの仕方によって地域が大きく変わる。雇用の成長についても同様であり、これまでの変化と今後の変化をクロスして考えないと、地域のダイナミックな変化を予測することができない。
 3つ目は、地域産業が安定的・持続的に成長しているかどうかである。地域の自立度により違いはあるが、生産するとき、企業はすべてをゼロから作るのではなく、他地域から原材料や中間部品などの中間材を調達する。上流産業が近くにある場合、そこで技術を開発すれば地域は大きなメリットをうける。地域が巨大マーケットを有している場合、例えば自動車の需要が増えると、タイヤ、鉄板、ゴム、シリコン、ガラスなどの生産が波及する。対象産業によって波及の状況は異なるが、建設業ではほとんどが建設業にのみ生産が波及するのに対して、観光では、交通、おみやげ、製造、第一次産業など、いろいろな産業に波及する。つまり所得に影響する範囲が広くなるということである。
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『地域経済のリスクとリターン』のグラフ
【図4 地域経済のリスクとリターン】
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 次に、地域の安定性について地域経済のリスクとリターンで考える。図4を見ると、三重はハイリスク・ハイリターンである。これは製造業が集積し、景気変動が大きいことを示す。製造業のシェアが低い沖縄や北海道はローリターンで、高知や島根もこの枠に入る。また、東京は大阪に比べるとハイリスクだがハイリターンである。

 リスクとリターンの最も効率的な組み合わせは地域によって異なるため、どの地域も同じ組み合わせになることはない。各地域において、効率的な限界値を目指して誘導するような産業構成にすることが必要である。
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『地域経済のリスクとリターン(府県)』のグラフ
【図5 産業別のリスクとリターン:京都府・大阪府】
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 ひとつの地域において、産業別にリスクとリターンの状況(図5)を見ると、製造業は為替レートや原材料費のぶれなどによって成長率が変わるため不安定である一方、不動産、サービス業、商業などは安定しており、ある程度成長している。これらを踏まえると、景気の良いときには製造業でできるだけ稼ぎ、景気が下降気味のときは、雇用吸収能力の高いサービス業や商業などで雇用を確保するという考え方が挙げられる。雇用を吸収する産業と外貨を稼ぐ産業は同じではないので、両者を繋ぐことは不可能ではない。両者を繋ぐということは、複線的産業と連関構造をつくるということである。これは、小さい地域で作ることは難しい一方、大きい地域では作りやすくなるが輸送や震災のリスクなどが大きくなるため、一定規模の地域にとどめることが必要である。川下側からのつながりを考えたり、第六次産業 のように供給側、川上側から考慮していく必要がある。もうひとつ大事なことは、外的ショックである。川下でショックがあると川上に影響が及び、川上でショックがあると川下にまで影響が及ぶ。そうするとその地域すべてに影響するので、複数の連関構造を構築することが必要で、複数つくるためにはある程度の広域である必要がある。

※第六次産業:農林漁業など第1次産業を、加工など第2次産業や、小売など第3次産業と融合させたもの
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5. リスクへの展望・特化と多様性
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 これからは多様性が非常に重要である。東京になぜこれだけの成長率があるかというと、1つは多様性があるからである。そして、大阪もその効果を享受している地域の1つである。
 集積をするということは、そこで新しいイノベーションが生まれる可能性を高める。都市や地域が成長するとき、特化なのか多様性なのかが1990年代半ば頃から研究が進められてきたが、大都市の多様性とは、特化していないという意味ではなく、小都市には存在しない特化した財・サービスが沢山あるということを意味している。特化し多様性を有しているというのは、大都市か、大都市と非常に安価でアクセスの良いネットワークで結ばれた地域でないと出来ないのではないかと感じている。
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6. 地域のポテンシャル
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 一般的にポテンシャルとは、地域のストック量で考えるが、空間経済学で考えられているポテンシャルは、需要ポテンシャルと供給ポテンシャルがあり、重力モデル(グラビティモデル)の展開型が用いられる。

 大阪にとって、モノを生産したときに、大阪から東京に輸送する際には輸送費がかかるため、その輸送費はポテンシャルから割り引かれる。一方、東京はマーケットが大きいため大阪にとってはプラスになり、これが需要ポテンシャルである。これは、大阪から46都道府県それぞれの輸送コストと各輸送先の経済力や人口を基に計算できる。大阪から遠いとポテンシャルが小さく、また相手となる地域、移出先の経済規模が大きいとポテンシャルが高くなる。相手先の物価が高いとポテンシャルは上がる。
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『財・サービスフローでの地域ポテンシャル計算例』の表
【図6 財・サービスフローでの地域ポテンシャル計算例】
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 供給ポテンシャルとは、移入に着目したものである。経済を発展させるためには、移出だけでは限界があり、内需に着目していく必要がある。内需であれば投資や消費が対象となり、消費されるものを生産するという考え方もあるが、移入(価格)を減らすことも考えられる。例えば、再生エネルギーを生産することで化石燃料の移入を減らすことが出来る。移入を減らすことで、地域で使えるお金が増える。例えばパナソニックがPCを製造する時、中間部品を近くから仕入れると輸送費が安くなり、コストが抑制され、中間投入において優位に立てる。中間投入財の輸送距離を考慮した供給コスト指数とも言える。
 距離で見たとき、日本の真ん中にある地域はポテンシャルが高い。しかし東京は物価が高いためにポテンシャルが下がる。北海道や沖縄は縁辺部のためポテンシャルが低くなる。距離、輸送費用、相手の価格指数を相対的に考慮したグラビティモデルで考えると、ポテンシャルが変わってくる。ストックではなく経済活動においてポテンシャルが高いと賃金も高くなる。日本では実証分析結果については、まだ殆どやられていないが、新しいポテンシャルの考え方ということで提案した。
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7. 計画の実現性に向けて
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 近年、大学と企業・大学と地域の連携が推進されているが、大学の研究者が考えているスパンと自治体や企業の人が考えているアウトプットのスパンは合致しないことが多い。このような状況において、政策に、地域の産業構造に関する分析結果を活かそうと思うと、行政、場合によって議会と大学が集まって協議会のようなところで協議し、そこでリサーチして提言していかなければならない。さらに、そのリサーチの結果を政治家が汲み取らないといけない。

 アメリカのピッツバーグはV字回復をした町として知られている。ここでは、都市開発協議会という組織があり、ピッツバーグ市を中心に広域的な産業クラスターを形成したが、主導権はピッツバーグ市が持っている。また、オレゴン州のポートランドでは、メトロという協議会を中心に持続可能な都市づくりをおこなってきた。ポートランド都市圏は成長管理をおこなっており、持続可能な都市を目指しているが、バウンダリー(都市成長境界線)について、常に広域的な協議会で決定している。これらの取り組みにおいてポイントとなるのは、広域的な協議会の中でも、最大の発言力を持つのはピッツバーグ市であり、ポートランド市だという点である。それが良いかどうかは分からないが、ある程度のリーダーシップは必要であることが言える。そういうことを踏まえると、科学的根拠に基づいた持続可能性に向けた提言を出して、それを政治家が実行できるかどうかである。
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以上
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