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取材協力:堺市建築都市局 臨海整備室 |
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2012年7月、大阪府堺市は『堺臨海部再生・創造ビジョン 〜みんなで創り、楽しみ、伝えよう堺の海辺!〜』を発表した。これは、埋め立て地が広がる臨海部の海辺の再生を目的に、20〜30年後のあるべき姿とその実現に向けた方策を描いたものである。
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堺市の位置 |
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●海から発展してきた都市堺が海辺の再生を目指す |
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“もののはじまりなんでも堺”といわれるほど、堺は古くから世界各国との交易が盛んに行われ、人と物、情報が行き交う国際貿易都市として活気に溢れていた。
特に堺の海辺は“東洋一のリゾート地”と呼ばれ、海水浴・潮干狩りだけではなく、明治36年の内国勧業博覧会で建設された水族館、あるいは潮湯という浴場施設もある日本でも屈指の海浜リゾート地として、大正時代の最盛期には市外からも多くの観光客が訪れた。しかし、昭和の高度成長期になると海を埋め立てて臨海工業地帯が造られ、その美しかった風景は一変してしまう。 |
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活気にあふれていたころの堺市臨海部 |
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近畿の経済発展に大きく貢献する一方で、埋め立てや護岸化などによって人々に愛されてきた美しい風景と海に親しむ環境は消え、アクセスの不便さもあってかつての賑わいが消えていった。 |
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堺市では、以前の活気を呼び戻すべく“海との触れ合い”、歴史文化・観光資源などを活かした“賑わいづくり”“地球環境への対応”を基本方針とした“人と生き物に優しい魅力あふれる海辺”の実現を目指し『臨海部再生・創造ビジョン』を策定した。対象地域は臨海部全域で、特に重点対象地域として4地域を選定し、賑わい創出や環境改善に取り組んでいくこととした。 |
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重点対象地域 |
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「昔のように堺の海を自然と触れ合える憩いや癒しの場に戻したい」という気持ちはかつての堺を知る誰もが抱いている思いである。そのため、堺市が将来に渡り発展し続けるための課題として、2010年秋“市民のために海を身近なものに”をテーマにビジョン策定に取り組んだのは当然の流れだった。 |
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●堺の海辺に行ったことがない子供たちがいるという現状 |
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臨海部全体を検討対象としたビジョンは、専門家を含む多くの関係機関が連携を取りながら、まさに一丸となって創られた。
市政モニターへのアンケートをはじめ、関係機関へのアンケートやヒアリング調査などを重ね、市民の声も広く集めた。市政モニター500名によるアンケートでは、その過半数が堺浜にある“海とのふれあい広場”について「全く知らなかった」と回答し、更なる情報発信の必要性が浮き彫りになった。 |
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また、市内の小学5・6年生(約270名)のアンケートでは、堺の海は「ゴミが多そう」「汚れていそう」「工場が多い」などのイメージを持っていることが分かった。臨海部から離れた小学校では、堺の海辺に行ったことがない子どもたちがいるというショッキングな回答もあった。
「海辺がきれいになって屋台のようなお店が並ぶと楽しそうなので遊びに行く」など、そんな子どもたちの要望に応えるためにも、かつてのような海と触れ合える美しい水辺の復活が期待される。 |
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将来堺の海辺がこうなればいいなと思うこと |
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普段海辺との関わりが深い漁業関係団体やNPO団体、自治会組織とのヒアリングはまさに膝と膝を突き合わせるような討論会形式で行われ、忌憚のない意見が交わされた。
共通の意見として、水質を改善することでイメージアップを図り、道路などの交通インフラを整備すればイベントなどもできるようになり、人を呼ぶこともできるのではないかというものであった。 |
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●具体的な事業 |
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2012年10月には“海とのふれあい広場”北側に、家族で楽しめる“海釣りテラス”がオープンする。これまでは護岸用フェンスがあったため、海に近づくことができなかったエリアが、芝を貼った緩やかな傾斜の護岸となり、海を眺めながら散歩できるようになる。広場には無料のバーベキューエリアやドッグランエリア、駐車場も整備されているので、完成すれば家族や仲間で楽しめる場所としての賑わいが期待されている。 |
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海釣りテラス |
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2013年春には、J-GREEN堺(堺市立サッカー・ナショナルトレーニングセンター)の南側に“堺浜ふれあいビーチ”も完成予定で、海と触れ合うことができる場所がさらに増える。臨港道路ができたことで、これまで不便だったエリアもアクセスが良くなり、これらを巡る“堺浜散策ルート”の作成にも着手しているところである。 |
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堺浜ふれあいビーチ |
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また、市では堺旧港の市有地(約1.3ha)を利用して、堺旧港周辺の賑わいづくりを進めるため、事業者の提案を公募し、堺旧港親水護岸を結ぶ連絡橋や親水デッキなどの公的施設や商業施設などの整備も進める。南海本線堺駅に近く、旧堺燈台や大浜公園などの観光資源が多い堺旧港エリアの整備は、今後5年間で重点的に行っていく予定だ。このような動きから、堺旧港への年間来訪者数を3万人から2020年度までに200万人に増やすとしている。 |
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大浜北町市有地活用事業位置図(赤で示したエリア) |
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また、堺浜・堺旧港以外のエリアでも堺第7-3区の産業廃棄物の埋立処分場跡に整備された“共生の森”の活用や、浜寺水路エリアでは浜寺公園と一体となった親水・市民活動の促進などで『人と生き物に優しい魅力あふれる海辺』の実現に向けて様々な事業が展開される。 |
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府民参加の森づくり(提供:大阪府みどり推進課) |
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このように堺市では『臨海部再生・創造ビジョン』を発表し、着々と事業を進めている。かつての“人々で賑わう美しい海辺”の再生を目指し、大きく変わろうとしている堺市の5年後、10年後に注目したい。 |
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堺市の“なぎさ海道”登録資源は、本ビジョンの整備対象エリア内に22ヶ所が登録されている。『人と海のふれあう空間・海辺の回復』を目的としている“なぎさ海道”の活動は、堺市の施策とリンクしており、これからもPRや情報発信において有効に活用されていくことを期待したい。 |
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●<参考>堺市にある「なぎさ海道」の登録資源 |
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海とのふれあい広場
国の基幹的広域防災拠点と一体となりリニューアルオープンした。海に囲まれた広大な緑の空間や自然を満喫できる。また、海釣りやBBQなどが楽しめるほか、ドッグランもある。 |
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住所:堺市堺区匠町6番地
営業時間:9:00~17:00
(夏休み期間のうち土曜・日曜・祝日に限り9:00~19:00)
駐車場:有(無料)
URL:http://www.sakai-tcb.or.jp/spot/spot.php?id=33
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旧堺燈台
明治10年に築造された高さ11.3mの六角錘形の灯台。 堺のシンボルの一つとして保存、現地に現存する日本最古の木造洋式灯台として国指定史跡になっている。 |
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住所:堺市堺区大浜北町5丁1-22
(南海線「堺駅」徒歩約15分)
駐車場:大浜公園駐車場 265台(有料)
URL:http://www.sakai-tcb.or.jp/spot/spot.php?id=51&bk=1
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大浜公園
明治36年内国勧業博覧会場にもなった最古の市営公園。 |
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住所:堺市堺区大浜北町4・5丁
(南海線「堺駅」徒歩約10分)
駐車場:265台(有料)
URL:http://www.sakai-tcb.or.jp/spot/spot.php?id=41&bk=1
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浜寺公園
明治6年完成の日本最古の公園の一つ。 |
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住所:堺市西区浜寺公園町
(阪堺線「浜寺駅前駅」下車、南海線「浜寺公園駅」下車)
駐車場:509台(有料)
URL:http://www.sakai-tcb.or.jp/spot/spot.php?id=41&bk=1
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◎堺浜エリア
J-GREEN堺(市立サッカー・ナショナルトレーニングセンター)
親水緑地
堺浜一号公園
◎堺旧港エリア
神明神社
お蔭山跡
旧港親水護岸
擁護璽
堺大魚夜市
明治天皇御駐ひつ之跡
蘇鉄山
堺北台場跡
堺南台場跡
吉川俵右衛門顕彰碑
龍女神像
堺漁港とれとれ市
◎浜寺水路エリア
泉州国際市民マラソン
◎その他の臨海部
関西電力(株) 堺港発電所
ライオン(株) 大阪工場
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以上 |
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