一般財団法人大阪湾ベイエリア開発推進機構
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大阪湾港湾の将来像~関西シリコンベイ構想~
 
 大阪湾各港の港湾計画改訂の指針とするため、国、各港湾管理者、関係各分野の有識者の意見を聞き、昨年9月に国土交通省近畿地方整備局が策定した「関西シリコンベイ構想―大阪湾港湾の基本構想―」は、概ね15年後の大阪湾の将来像等を示すものである。その策定に際して、大阪湾港湾の基本構想懇談会の座長として深くかかわってこられた、神戸大学工学部教授の黒田勝彦氏に、大阪湾の将来像「関西シリコンベイ構想」についてお話を伺った。

黒田 勝彦 ◆黒田 勝彦
くろだ かつひこ

1942年生まれ。神戸大学工学部建設学科教授。
京都大学大学院工学研究科修士課程土木工学専攻修了後、京都大学助教授、熊本大学教授を経て93年
より現職。「大阪湾港湾の基本構想」懇談会委員及び座長を務める。1985年に日本航海学会論文賞を受賞。


大阪湾港湾における4つの課題

  今回、大阪湾港湾の基本構想を策定するにあたり、まず大阪湾域の問題点や課題を概ね次の4点に集約しました。その1番目が大阪湾港湾の国際競争力の著しい低下です。その背景として、大阪湾に寄港していた欧州航路・北米航路などの基幹航路数の減少が挙げられます。目的地までダイレクトに出せる航路が減ると、それだけフィーダーサービス(※1)を掛けられるということに繋がり、結果としてはコストと時間がかかります。これは関西の企業にとっては大きな痛手になるので、国際競争力をつけて、基幹航路数を増やさないといけない。日本の3大湾である東京湾・伊勢湾・大阪湾から欧州や北米に輸出する貨物の15%くらいが、他の国の港でフィーダーサービスを掛けられているのです。したがって、大阪湾港湾に国際競争力を付与するにはどうすればよいかが課題です。
  基幹航路の跋港を引き起している最も大きな原因は、大阪湾岸域の経済基盤の沈下です。地場の貨物が減少すると基幹航路寄港の魅力が減るからです。したがって、湾岸域の遊休地をどう再生して経済力を回復するのかという点が2番目の課題です。
  3番目は、関西の経済がアジアと非常に強い結びつきを持つようになってきている今、それに対応して大阪湾はどうすればいいのかということ。そして4番目は、大阪湾の海域の環境回復について、これを長期的な視点でどうするのか、さらに、近々に発生が予測されている東南海・南海地震に備えるにはどうすればよいか、これらが基本構想を策定する上での大きな課題でした。

(※1)フィーダーサービス
コンテナ船が寄港する主要港湾と、寄港しない港湾との間の内航船によるコンテナ貨物の支線輸送、そのサービスのこと。

関西シリコンベイ構想とは:
3つの柱「活力」、「安全・安心」、「潤い」


  基本的な考え方として、今までの大阪湾港湾の基本構想と大きく変わったポイントがあります。従来は主に港湾施設の整備に重点が置かれていましたが、今回の構想は既存の施設をどうやって運営活用して国際競争力を高めるのか、ということに主眼が置かれました。端的に言えば「量的拡大」から脱却して「運営効率化」を図るということです。経済がグローバル化している今日、企業は国際的な範囲でサプライチェーンマネジメント(※2)をする必要があります。これはロジスティクス(物流)に直結する問題です。いかにして物流にかかるコストを抑えるのか。その競争が激化しています。企業の競争力強化のためにも、発想を変え、物流にかかるコストを「港湾自体の効率化」で抑える必要があるのです。
その視点で「活力」、「安全・安心」、「潤い」という3つの柱に沿って大阪湾の将来像を描いていきました。
  最初に「活力」についてですが、本構想は、Strategic International Logistics Industrial COMmunity Bay の頭文字をとり「関西シリコンベイ構想」と名づけたもので、直訳すると「多様な産業クラスターから成る戦略的国際ロジスティクスコミュニティの形成」となります。グローバル化時代にふさわしい産業クラスターをいかに大阪湾に集約させていくかが焦点となります。
  現在、神戸では医療産業クラスターが成長しています。今後も神戸空港の開港に伴って企業は進出してくるでしょう。またロボットなどのハイテク部門は、大阪府下の企業ではかなり技術力が進んでいますので、先端ハイテク産業クラスターとして期待ができます。そしてもう1つはリサイクル産業クラスターです。例えば、レアメタルの抽出や再生技術というのは関西では優れたものがあります。日本にはレアメタルの資源自体はほとんどありませんが、世界からその資源となる使用済みの電子機器等を船で運び、再生工場を作ってレアメタルさえ抽出できれば、ほとんど価値のない廃棄物が高い付加価値のあるものとして生まれ変わります。高付加価値製品は航空機で輸出されます。すなわち、シー・アンド・エアーの一大基地を大阪湾に実現させるのです。これが大阪湾ベイエリアで実現できれば、空港も港湾も活性化するだけでなく、周辺産業も芽生えるでしょう。これらは高付加価値産業クラスターと言えます。こうした産業クラスターの集積と同時に、大阪港と神戸港における施設の一体的運用と、内貿・外貿複合一貫輸送システムの確立を図る必要があります。
  2点目の「安全・安心」については、まず基幹的広域防災拠点の物流基地をどこに造るかということです。今後、各港の港湾関係者の方々で議論していただきたいと思います。
  さらに、近い将来その発生が予想されている東南海・南海地震による津波対策が挙げられます。これに対する一つの提案として、大阪湾全体の湾岸域に「森の回廊(※3)」を造る構想を提案致しました。一昨年のインド洋沖津波の時でも小型船が内陸に押し上げられたことにより被害が拡大しました。臨海部に防風・防波用の緑地帯があれば、そこで津波の勢いも減少しますし、小型船の押し上げもかなり止められ、市街地への被害が少なくなると思われます。
  それからもう一つ、これはテロ対策にも関係しますが、改正されたSOLAS条約(※4)にどう対応するのかということ。ターミナルにフェンスや監視カメラをつけるなどの何段階かの措置があるのですが、それらを確実にやっておく必要があります。
  最後の「潤い」に関連する事柄としては、大阪湾ベイエリア開発推進機構が取り組んでいる市民が大阪湾に親しむ場としての「なぎさ海道」は定着されつつあり、前述の「森の回廊」構想なども今後はすすめていく必要があります。また、海域の環境調整機能や大阪湾の環境再生について言えば、例えば堺で構想されているような、水路を作って水通しを良くすることもその効果が期待できます。
  また臨海部を居住環境として見た場合、先導的な取り組みとして「ゼロエミッション居住区」を設置することも提案しています。知識集約型の産業のクラスターを造っていく上で、居住環境が良くないと人が住んでくれないでしょう。
  そして循環型社会の構築という部分では、産業廃棄物の海面処理場についても新たな事業スキームを検討する必要があります。

(※2)サプライチェーンマネジメント
取引先との受発注、資材調達から在庫管理、製品の配送等、事業活動の川上から川下までを総合的に管理すること。
(※3)森の回廊
防風・防波緑地等の防止帯による回廊。後背地に対する防災機能及び環境保全機能の向上が期待される。
(※4)SOLAS条約
1974年に締結された「海上における人命の安全のための国際条約」。2002年に国際的なテロ対策の強化として改正された。

大阪湾ポートオーソリティーの形成について


  活力の向上を図る取り組みの一つが「ポートオーソリティーの形成」です。これは一般的には各港湾の一体的な整備・管理・運営を意味します。現在、オーソリティーを持たない国でも国際競争力のある港湾は、港湾の管理と運営が分離されています。具体的には、下物の整備を含めた維持管理を国が行い、競争力を必要とする上物の整備・運営を自治体から独立した民間会社で行う。この「上下分離方式」によって得られるのは、効率化と競争力です。2004年に阪神港(神戸港・大阪港)が「スーパー中枢港湾」として指定されたこともあり、本構想では「阪神港における効率的なコンテナターミナル運営の実施」を掲げています。その取り組みは、「大阪湾ポートオーソリティー」の前段階となるもので、現存する4つの港湾管理者を一元化する前にスーパー中枢港湾における「指定特定ターミナル」の管理・運営を一体的に行う「阪神ポートオーソリティー」というものです。

大阪湾ポートオーソリティーの形成に向けて

  例えば、港湾関連の書類決済を全て電子化し、その情報を一元管理するとします。そうすると利用者や港湾管理者、そして国の機関もそのネットワークにアクセスすることができ、そこで情報のワンストップ化が図られます。利用者や荷主にしてみれば、自分の荷物が何月何日何時にどこの港へどういう経路で行くというのがわかるようになるでしょう。
  こうした一元管理によって、ユーザーの利便性は大きく向上し、それが結果として新しい港湾のビジネスモデルともなります。実はこうしたことを最初に手掛けたのは、シンガポールのPSA(※5)です。国から民営化されたPSAは、徹底した効率化によるコスト削減によって競争力を強化しました。今では東アジアを中心とする複数のコンテナターミナルを一元的に管理・運営することで、荷主の囲い込みにまで成功しています。つまり「私のターミナルを使ってくれたら、全ての情報を全部わかるようにしてあげますよ」ということです。これにより今までA社のターミナルを使っていた荷主が、PSAが運営するターミナルに切り替えていくことになります。国際競争力をつけるためにも、PSAのようなシステムを早期に整備する必要があります。
  「大阪湾ポートオーソリティー」の目的もそこにあります。神戸港と大阪港、この2つの港湾の機能全てをすぐに一元化するのは難しいので、まずは指定特定ターミナルだけでも一元化して、ビジネスモデルとなるターミナル運営をしていこうと。その次の段階として阪神港の一港化があり、将来に見据えるのは港湾だけでなく、空港も含めたポートオーソリティーの形成です。

(※5)PSA(Port of Singapore Authority)
1997年のシンガポール港湾局による港湾建設・オペレーション部門の民営化に伴い発足した政府系企業。現在、11カ国で18の港湾を管理・運営している。
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大阪湾の将来像について
~アジアの玄関口として美しい大阪湾ベイエリアに~

  私が抱いている大阪湾のイメージを絵にかけたらいいのですが…。まずは大阪湾を取り巻く都市が美しくあること。景観法ができた今、それを利用してどうやって景観を改善していくのか。海から見れば汚い物は見えないから素晴らしく映っても、陸へ上がると汚い所が見えてくるのが大阪湾岸域の実情です。それを陸へ上がっても「さすが大阪湾やな!」という状態にしないといけない。そのためには湾岸域全体で考えて、関係者が連携して取り組む必要があります。その先に前述の「ゼロエミッション都市」の実現があると考えます。
  そして企業経済から見れば、大阪湾が世界の都市と港と空港でつながっていて、また非常に生産効率も良く、国際競争力のあるインフラも揃っている。そうすれば海外に流出している企業も戻ってくると思います。言い換えれば、日本が強みとする知識集約型の産業クラスターというソフトと、アジアや世界が必要とする港湾の一元管理というハードの両方が相互に機能している状態です。
  国土形成の観点からいえば、中部を境に東の方の整備が進んでいますが、遅れている西の整備をどうするか、ビジョンを打ち出していかないと駄目ですね。東アジアの東端に位置する大阪湾が、最も効率的で便利な港であれば、アジア一帯の玄関口になっていくことは間違いありません。
  私が描くこうした大阪湾の将来像の実現は、すぐには難しいかもしれません。もしかしたら100年くらいかかる話かもしれません。しかし、できるところからやっていかないといけない。その1歩を踏み出し、その1歩1歩が100年後に繋がっていくようにね。
わが国及び関西の輸出入額の地域別シェア
(2006年新年)


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